2日後・都内某所――

霧人はバイクでその新たな怪人により、人が消えた場所を訪れた。
渋谷霧人はあれからゼルフェノア本部・バイク隊の隊長になっている。


「一気に10人くらい拉致られたってヤバくないか?」

思わずぼそっと声が出てしまった。


…怪人はどこにいる?



本部・司令室。

鼎は新たな怪人が出現、一般人が拉致られた現場の映像と地図をモニターで見ている。メインモニターには現場にいる霧人の姿が映し出されていた。


「霧人、何か手がかりはあったか?」
鼎は霧人に話しかけた。


「今現場、見てんだけど…何にもない。例の怪人の目撃情報が集中してるのはこの辺なんだけどな〜」
「私は思うのだが、その怪人を倒せば拉致られた人達は戻ってくると仮定している」


宇崎はこのやり取りを見て思った。鼎はかなり冷静になっている。


「俺だけじゃ心もとないんで、誰かこっちに寄越せますかー?」
「今まで暇だったから行ける人間はたくさんいるぞ。霧人は誰に来て貰いたい?複数でも構わない」


ナチュラルに質問に答えないで質問返しする鼎。霧人は少し迷ってから答えた。


「彩音といちかを頼む」
「わかった」

霧人からしたら新たな怪人の様子見を兼ねてまずは、平均的な能力と装備の彩音とトリッキーな戦闘スタイルのいちかを選んだらしい。
霧人にも対怪人用装備はあるため、問題はない。


鼎は彩音といちかを霧人がいる、現場周辺に送り込むことに。


「きりゅさん行ってきまっす!」
いちかは元気よく本部を出た。彩音はいちかの保護者みたいになっている。

「鼎、現場は私達に任せてね」
「気をつけろよ」



恭平はとぼとぼと、知らず知らずにその現場周辺を歩いていた。遠くにいるのはゼルフェノア隊員。

あれ?ゼルフェノアの人達だ。なんでここにいるんだ?



合流した彩音といちかは霧人と鼎の推測を聞いた。

「鬼みたいな謎怪人を倒すと、拉致られた人達は戻る…のかなぁ?」
「それは怪人見ないことにはわからんだろうよ、時任よ」
「そーだね」

「霧人さん、怪人がこの辺に出たってことは近くをうろついてるかも」



その頃の御堂。


御堂は桐谷と共に休憩所にいた。
「新たな怪人ってなんなんだよ…」

御堂、若干イラついている。指示を出した鼎に対してではなく、新たな怪人に対してだ。
鬼みたいな角がある怪人としか、情報がないのが不気味。


「桐谷さん、霧人達音沙汰ないけど大丈夫か?」
「調査が順調なのか、襲撃に巻き込まれたか…ですかねぇ」

桐谷は温かい紅茶を飲んだ。
御堂は気難しそうな顔をする。


あいつらが巻き込まれるなんて考えられないが…。



恭平は現場周辺から離れた。ゼルフェノアの人達とはなんとなく距離をおきたい。
数ヶ月前に鼎と接触したせいもあるのだが。それも2回。鼎の正体を突き止めたくて深入りした結果、彼女から「これ以上私に関わるな」と彼は突っぱねられていた。

そんな恭平に新たな怪人がいきなり襲撃してきた。恭平は吹っ飛ばされた。


「うわあああああ!!」
恭平は地面に叩きつけられた。見上げるとそこには角が生えた鬼のような怪人が立っている。怪人はむんずと恭平を掴むとじわじわ圧をかけてくる。


恭平は恐怖に怯えていた。

殺される…!嫌だ、死にたくない…!


その時、銃声が聞こえた。

弾は当たらなかったが、怪人は恭平ではなく音の方向を見た。


「早く逃げて!」
銃撃したのは彩音。恭平は怪人の手が緩んだ隙にダッシュで逃げる。いちかはワイヤーを展開させ、怪人の動きを止めようとするも怪人はワイヤーをぶちぶちと切ってしまう。


「うぎゃー!ワイヤー切られたー!」
いちかはオーバーリアクション。霧人は冷静にトンファーを出すと、その怪人に果敢に立ち向かっていく。


「時任、お前は立て直せ。彩音は援護を頼む」
彩音は銃で援護。霧人はトンファーで近接戦を仕掛ける。いちかはワイヤーが効かないとわかるや、違う装備を出した。


なんなのあの怪人!?



恭平は命からがら逃げてきた。かなり疲れたのか、ベンチに座る。ヘトヘトだ。

なんなんだよ、あの鬼みたいなやつは…!
ものすごい力で掴まれた。怖い。怖すぎる。



司令室ではメインモニターに、その怪人の姿をはっきりと捉えた。


宇崎と鼎が反応する。

「怪人というよりは鬼にしか見えないぞ…」
「戦闘員がいないな…。戦闘員を出さないスタイルなのか、こいつらはメギドとは明らかに違うタイプだな…」

「室長、いちかのワイヤーが効いてない。メギドよりも強力に見えるが」
「よし、和希を投入するか!」



解析班。朝倉達はこの鬼のような怪人を分析中。


「ようやくはっきりした映像が来たけど、なんなのこれ!?怪人というよりは鬼そのものよ!?」

朝倉はギャーギャー騒いでる。神はいつも通り淡々と分析中。矢神は眠そう。


「チーフ、今渋谷さん達3人が例の交戦中って出てますよ。ほら」
矢神は映像を出した。神はかなり細かい分析をしている。

「メギドとは全く異なる怪人だな。こいつが拉致ったと見て間違いないだろ。
ここ約1週間の現場周辺の映像を見たが、この怪人しかいない。出現した怪人は」
「こいつがクロで間違いないわけね!?」



その頃、現場に御堂が到着。いちかは思わず明るい声を出す。


「たいちょー!来てくれたんだ!」
「未知なもん相手だからとよ。俺のやり方で倒せるか!?」

御堂は愛用のカスタム銃を構えた。対怪人用の銃もあるが、彼は基本的にこのスタイル。
御堂も見たことがない怪人相手に挑むことに。霧人は御堂を見るなり、怪人から離れた。


「霧人、選手交代だ。ここからは俺がやる」
「厄介だから気をつけろよー。時任のワイヤー切る威力がある時点でヤバいだろうが」


あの特殊なワイヤー切るとか、マジか!?


「へっ、おもしれぇ」
御堂は少しだけ笑った。



ゼノク・司令室。蔦沼と西澤、南もこの戦闘の様子をモニタリングしていた。


「御堂を投入したか」
西澤、呟く。
「勝てるだろう〜。この戦い。御堂『隊長』と渋谷がいる時点でな。紀柳院も補佐ナイスじゃないか」


御堂を投入したのは宇崎の判断なんだが…。


長官、相変わらず呑気というか緊張感が全くない。相手は未知なる怪人なのに、もう勝利宣言してる…。


「解析班のデータもやはり、あの怪人を倒せば消えた人達が戻るという結論になってるね」
「長官、そんな都合よく行くんですか…?消えた人達、異空間にいる可能性が高いのに?」

「それはこれからだよ。まずはあの鬼怪人を撃破してからだ。まー御堂ならやってくれるんじゃない?
あいつの腕はピカイチだろ?」


御堂を過信している…。



恭平はなぜかあの隊員達が気になった。なんでだろう…。脳裏に鼎の姿がちらつく。

あのままだったら、俺は怪人に拉致られたかもしれないんだよな…。



遠くから明らかに激しい音がする。隊員がさっきの怪人と交戦してるんだ。



御堂は怪人相手に肉弾戦・銃撃を次々浴びせる。不気味なのは怪人は一言も喋らないことだ。気味が悪い。

呻き声を上げながら怪人は迫っている。
ほぼ無言の攻撃の応酬が続く。聞こえるのは怪人の呻き声。攻撃力が高いな!



弱点はどこだ…?どこにある?