黒バス/赤黒/特殊パロ/サイトにUPしてたものを移動させただけ/何があっても許せる
2020-11-7 20:57
神を従えし子8
見覚えのある茶髪が人混みのなかに入っていく。
勢い良く椅子から立ち上がった黒子はその茶髪を追い掛けて人混みのなかに飛び込んだ。
背後から黒子の名を呼ぶ声が聞こえる。しかし、黒子は立ち止まらなかった。必死に人混みのなかを掻き分けて漸く茶髪――桜井の腕をつかんだ。
「桜井君!」
桜井がゆっくりと振り返る。
目の前の黒子に気付いた瞬間、桜井は顔を強張らせた。
離してください、と声を荒らげて腕をつかんでいる黒子の手を振り解いた。
昨晩まで親しげに会話をしていた桜井の突然の拒絶に黒子は大きく目を見開いた。黒子を拒絶した桜井自身も何故か傷付いたような表情をしていた。
「僕に触らないで下さい…」
「どうしてですか?もしかして無意識のうちに桜井君を傷つけるようなことをしてしまいましたか?」
黒子の問いに桜井は首を横に振りながら「違うんです」と答える。
なら、どうして彼は黒子を拒絶したのだろうか。その理由が知りたい。
思い切って一歩近付くと桜井はあからさまに身体を震わせ、怯えたような眼差しを黒子に向けてきた。
歩み寄ってくる黒子から離れるように後退りした桜井がいきなり踵を返して走り出す。
慌てて桜井の後を追い掛けようとした黒子だったが、駆け出すよりも先に誰かに肩をつかまれる。振り返ってみれば険しい表情をした赤司が立っていた。
「体力が消耗するようなことは極力避けろ。生気が薄くなっている以上、少しの無理も禁物だ。……いいな?」
「でも、桜井君が…」
「桜井が気になるなら俺から話をしておこう。同じクラスだからな」
強引に腕を引かれ、危うくつんのめりそうになったが寸前のところで踏みとどまる。黒子が転びそうになっても赤司は腕を引くのを止めなかった。
もしかして、怒ってる?でも、なんで?
一度も此方を振り向かないまま腕を引き続ける赤司に困惑しながらも、黒子は桜井が走り去った人混みのなかを見た。しかし、残念ながら桜井の姿を見つけることは出来なかった。
そうこうしているうちに先程まで座っていた席に強制的に戻される。
席の前に立って待っていた高尾と緑間も黒子の無事を確認して安堵したのかホッと息を吐いて椅子に座り直した。
「いきなり走り出したから吃驚したぜ〜」
「何事かと思ったのだよ」
「すいません…桜井君の姿が見えたのでちょっと気になって…」
「桜井君って?」
桜井の名前に覚えながないのか、楓とミコトが怪訝そうに小首を傾げる。当たり前か、彼女たちが桜井と遭遇したのは昨日の朝食時の一回だけだ。覚えていないのも無理ない。
ガラの悪い少年たちに絡まれていた少年が桜井であることを話すと漸く思い出したようで楓が「ああ、あの情けない子ね」と手を叩き、その隣ではミコトがコクリと頷いた。
「で、その桜井君って子がどうしたの?」
「それがよくわからないんです…桜井君に声を掛けたらいきなり拒絶されて…」
「拒絶された?黒子、お前…何かやったのか?」
「特に覚えが……あ、昨日の夜、桜井君の前でまた倒れちゃったんですよね…それが原因でしょうか…」
「倒れた?それは何時、何処で、どんな状態でだ?」
物凄い剣幕をした緑間から質問攻め受けて黒子は一瞬たじろいだが、冷静に昨晩の倒れる前のことを思い出してみる。
目が覚めてから近くの休憩所に飲み物を買いに行って、確かそこで桜井と出会ったんだ。それで彼と会話してる最中に突然目眩がして、そのまま意識を失った。そう言えば意識を失う寸前に紫原の声が聞こえたっけ。
「桜井と話しているうちに目眩がしたのか…」
赤司がポツリと呟く。
そう言えば黒子を拒絶した時、桜井は自分に触れないで欲しいと黒子に叫んでいた。
目眩、薄くなった生気、桜井の拒絶、これらを全て繋げるにはもうひとつ――そうなった切っ掛けが必要だ。
顎に手を添え真剣な表情で思案をしていた赤司がおもむろに顔を上げる。
「黒子が倒れる直前、桜井は何をしていた?」
「え…何って、特別何もしてなかったですけど…」
「何も?それは本当か?」
―――部屋に戻りましょう。
半ば強引に引かれた腕。体勢を崩した黒子の身体を桜井が受け止めてくれたことで倒れるまでには至らなかったがその直後に目眩に襲われ、そのまま意識を失った。
聞かれるままに黒子は昨晩――桜井と出会った時のことを赤司たちに詳しく話した。
「そうか…そう言うことか…」
「何かわかったのか?」
「ああ、繋がったよ。…しかし、目的がわからない」
緑間の問いに小さく頷いた赤司だが、表情は相変わらず険しい。
黒子の生気が薄くなっている原因は間違いなく桜井だろう。だが、彼がどうして、どうやって、黒子の生気を奪っているのか、理由が、手段が、わからない。
再び考え込む赤司の目の前でミコトが何かを思い付いたようで、隣に居る楓にコソコソと耳打ちをする。
「うん、わかった。――ねぇ、ちょっといい?」
「……楓?」
高尾が楓の名を呼ぶ。
同時に皆の視線が楓に集まった。
注目された楓は一度咳払いをしてから改めて先程聞いたミコトの意見を皆に伝える。
桜井は黒子や赤司たちと同じように何らかの"神"を持っていて、その"神"が黒子の生気を奪っているかもしれない――とミコトは考えてるらしい。
確かにそう考えると辻褄があう。しかし、桜井と何度か会ってるが、赤司ですら彼から"神"の気配を感じ取ることは出来なかった。
「あっちの方から近付くなと言っているんだ。彼自身に何かあるのは間違いないだろうな」
「もし、本当に桜井君のなかに"神"があるのだとしたら…」
「言っておくが桜井よりも黒子の安全の方が優先だからな」
赤司の鋭い視線が黒子に突き刺さる。
それでも黒子は反論しようと口を開きかけたが、赤司はそれすら許さないと言わんばかりに黒子を見詰める赤い瞳を一瞬だけ金色に変化させた。
きっと彼のなかの"神"も黒子を危険に晒したくないのだろう。それは緑間も高尾もミコトも楓も同じだ。
皆に厳しい目を向けられ、黒子はその場でこれ以上のことを言うのは止めた。
* * *
生気が薄くなっているせいで幾ら眠っても強い眠気と倦怠感がとれない。お陰で一時限目の数学は爆睡してしまった。影が薄いのが幸いして居眠りはバレずに済んだが、流石にこのままじゃヤバイかもしれない。
欠伸を噛み締め、若干ふらつきながらも黒子は廊下を進む。
二時限目は化学で移動教室だ。化学室までの道程が遠い。
ゆっくりと階段を上っていると不意に目の前が真っ暗になった。全身から力が抜けて身体が後ろへと傾ぐ。
「―――黒ちんっ!」
落ちそうになった身体を背後から包み込む大きな温もり。
支えられてその場にゆっくりと座り込んだ黒子は重たい瞼を上げた。
視界に入ったのは覚えのある紫色の瞳。
背に回された逞しい腕が黒子をぎゅっと抱き締めた。
「やっぱり、黒ちんの生気が薄くなってる…」
「…紫…原君…?」
どうしよう、凄く眠い。
「黒ちん、アイツには近付いちゃ駄目だよ」
アイツ?アイツって誰?
視界がぼやける。
駄目だ、目を開けていられない。――もう限界だ。
強い眠気に抗えず、瞼を閉ざした黒子の意識は急速に深い闇へと沈んでいった。
雨音と共に何かが崩れる音がした。
勢い良く椅子から立ち上がった黒子はその茶髪を追い掛けて人混みのなかに飛び込んだ。
背後から黒子の名を呼ぶ声が聞こえる。しかし、黒子は立ち止まらなかった。必死に人混みのなかを掻き分けて漸く茶髪――桜井の腕をつかんだ。
「桜井君!」
桜井がゆっくりと振り返る。
目の前の黒子に気付いた瞬間、桜井は顔を強張らせた。
離してください、と声を荒らげて腕をつかんでいる黒子の手を振り解いた。
昨晩まで親しげに会話をしていた桜井の突然の拒絶に黒子は大きく目を見開いた。黒子を拒絶した桜井自身も何故か傷付いたような表情をしていた。
「僕に触らないで下さい…」
「どうしてですか?もしかして無意識のうちに桜井君を傷つけるようなことをしてしまいましたか?」
黒子の問いに桜井は首を横に振りながら「違うんです」と答える。
なら、どうして彼は黒子を拒絶したのだろうか。その理由が知りたい。
思い切って一歩近付くと桜井はあからさまに身体を震わせ、怯えたような眼差しを黒子に向けてきた。
歩み寄ってくる黒子から離れるように後退りした桜井がいきなり踵を返して走り出す。
慌てて桜井の後を追い掛けようとした黒子だったが、駆け出すよりも先に誰かに肩をつかまれる。振り返ってみれば険しい表情をした赤司が立っていた。
「体力が消耗するようなことは極力避けろ。生気が薄くなっている以上、少しの無理も禁物だ。……いいな?」
「でも、桜井君が…」
「桜井が気になるなら俺から話をしておこう。同じクラスだからな」
強引に腕を引かれ、危うくつんのめりそうになったが寸前のところで踏みとどまる。黒子が転びそうになっても赤司は腕を引くのを止めなかった。
もしかして、怒ってる?でも、なんで?
一度も此方を振り向かないまま腕を引き続ける赤司に困惑しながらも、黒子は桜井が走り去った人混みのなかを見た。しかし、残念ながら桜井の姿を見つけることは出来なかった。
そうこうしているうちに先程まで座っていた席に強制的に戻される。
席の前に立って待っていた高尾と緑間も黒子の無事を確認して安堵したのかホッと息を吐いて椅子に座り直した。
「いきなり走り出したから吃驚したぜ〜」
「何事かと思ったのだよ」
「すいません…桜井君の姿が見えたのでちょっと気になって…」
「桜井君って?」
桜井の名前に覚えながないのか、楓とミコトが怪訝そうに小首を傾げる。当たり前か、彼女たちが桜井と遭遇したのは昨日の朝食時の一回だけだ。覚えていないのも無理ない。
ガラの悪い少年たちに絡まれていた少年が桜井であることを話すと漸く思い出したようで楓が「ああ、あの情けない子ね」と手を叩き、その隣ではミコトがコクリと頷いた。
「で、その桜井君って子がどうしたの?」
「それがよくわからないんです…桜井君に声を掛けたらいきなり拒絶されて…」
「拒絶された?黒子、お前…何かやったのか?」
「特に覚えが……あ、昨日の夜、桜井君の前でまた倒れちゃったんですよね…それが原因でしょうか…」
「倒れた?それは何時、何処で、どんな状態でだ?」
物凄い剣幕をした緑間から質問攻め受けて黒子は一瞬たじろいだが、冷静に昨晩の倒れる前のことを思い出してみる。
目が覚めてから近くの休憩所に飲み物を買いに行って、確かそこで桜井と出会ったんだ。それで彼と会話してる最中に突然目眩がして、そのまま意識を失った。そう言えば意識を失う寸前に紫原の声が聞こえたっけ。
「桜井と話しているうちに目眩がしたのか…」
赤司がポツリと呟く。
そう言えば黒子を拒絶した時、桜井は自分に触れないで欲しいと黒子に叫んでいた。
目眩、薄くなった生気、桜井の拒絶、これらを全て繋げるにはもうひとつ――そうなった切っ掛けが必要だ。
顎に手を添え真剣な表情で思案をしていた赤司がおもむろに顔を上げる。
「黒子が倒れる直前、桜井は何をしていた?」
「え…何って、特別何もしてなかったですけど…」
「何も?それは本当か?」
―――部屋に戻りましょう。
半ば強引に引かれた腕。体勢を崩した黒子の身体を桜井が受け止めてくれたことで倒れるまでには至らなかったがその直後に目眩に襲われ、そのまま意識を失った。
聞かれるままに黒子は昨晩――桜井と出会った時のことを赤司たちに詳しく話した。
「そうか…そう言うことか…」
「何かわかったのか?」
「ああ、繋がったよ。…しかし、目的がわからない」
緑間の問いに小さく頷いた赤司だが、表情は相変わらず険しい。
黒子の生気が薄くなっている原因は間違いなく桜井だろう。だが、彼がどうして、どうやって、黒子の生気を奪っているのか、理由が、手段が、わからない。
再び考え込む赤司の目の前でミコトが何かを思い付いたようで、隣に居る楓にコソコソと耳打ちをする。
「うん、わかった。――ねぇ、ちょっといい?」
「……楓?」
高尾が楓の名を呼ぶ。
同時に皆の視線が楓に集まった。
注目された楓は一度咳払いをしてから改めて先程聞いたミコトの意見を皆に伝える。
桜井は黒子や赤司たちと同じように何らかの"神"を持っていて、その"神"が黒子の生気を奪っているかもしれない――とミコトは考えてるらしい。
確かにそう考えると辻褄があう。しかし、桜井と何度か会ってるが、赤司ですら彼から"神"の気配を感じ取ることは出来なかった。
「あっちの方から近付くなと言っているんだ。彼自身に何かあるのは間違いないだろうな」
「もし、本当に桜井君のなかに"神"があるのだとしたら…」
「言っておくが桜井よりも黒子の安全の方が優先だからな」
赤司の鋭い視線が黒子に突き刺さる。
それでも黒子は反論しようと口を開きかけたが、赤司はそれすら許さないと言わんばかりに黒子を見詰める赤い瞳を一瞬だけ金色に変化させた。
きっと彼のなかの"神"も黒子を危険に晒したくないのだろう。それは緑間も高尾もミコトも楓も同じだ。
皆に厳しい目を向けられ、黒子はその場でこれ以上のことを言うのは止めた。
* * *
生気が薄くなっているせいで幾ら眠っても強い眠気と倦怠感がとれない。お陰で一時限目の数学は爆睡してしまった。影が薄いのが幸いして居眠りはバレずに済んだが、流石にこのままじゃヤバイかもしれない。
欠伸を噛み締め、若干ふらつきながらも黒子は廊下を進む。
二時限目は化学で移動教室だ。化学室までの道程が遠い。
ゆっくりと階段を上っていると不意に目の前が真っ暗になった。全身から力が抜けて身体が後ろへと傾ぐ。
「―――黒ちんっ!」
落ちそうになった身体を背後から包み込む大きな温もり。
支えられてその場にゆっくりと座り込んだ黒子は重たい瞼を上げた。
視界に入ったのは覚えのある紫色の瞳。
背に回された逞しい腕が黒子をぎゅっと抱き締めた。
「やっぱり、黒ちんの生気が薄くなってる…」
「…紫…原君…?」
どうしよう、凄く眠い。
「黒ちん、アイツには近付いちゃ駄目だよ」
アイツ?アイツって誰?
視界がぼやける。
駄目だ、目を開けていられない。――もう限界だ。
強い眠気に抗えず、瞼を閉ざした黒子の意識は急速に深い闇へと沈んでいった。
雨音と共に何かが崩れる音がした。
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