「はぅ…ね、アンタって遅漏もいいとこで、こっち疲れるだけなんだよね…。アレはデカイから文句ないけどずっと腰動かしてるこっちの身にもなってよね」
「…テメェーのアナがガバガバだから俺がイけないの。分かる?」
ーバチンッ
「顔が良くて、アレが良いからって良い気になるんじゃないわよ!」
威勢良く俺のほっぺに平手打ちをして出て行く名前も知らない女の子。
3、4回夜の相手をして貰ったけど上手くないんだよねー、色々と。
彼女が居ないから言い寄ってくる女の子と一晩付き合っても納得するソレに出逢えた事がない。
どの子も同じ様な声を出して、勝手に舐めて挿れて、はい、昇天。
俺は置いてきぼりで、元気にはなってるけど、昇天する気配がないアレを慰めようとすると女の子は途中で疲れて飽きちゃうから大変。
仕方なく1人で頑張って精を出す頃には女の子は怒って帰っちゃう。
「マジ、病院行った方がいいかな?」
「何科?」
「あぁー…泌尿器科?」
「でも恥ずかしくない?」
「気持ちいいSEXが出来るならいいよー、何でも」
「…お前、男、試した事ある?」
昼休み・会社の食堂でカレーライスを隣で美味しそうに食べてる親友のキュヒョンには気兼ねなく何でも話せるから昨晩の事も話した。
なのに訳の分からない事を言われて俺は眉間に皺を寄せた。
「男?…男のケツに挿れるって事?」
「そうそう…。ちょっと待ってて…。あ、来た来た。シウォン!こっち!シウォン!」
「え?シウォンって…」
急に立ち上がったキュヒョンは入口に居た男子社員を大声で呼ぶと手を振りこっちに来いと言い出した。
男子社員はキュヒョンに気付くと手を上げて応えるとラーメンを受け取り俺達の前に座る。
「営業のシウォン。チャンミン初めてだろ?」
「あぁ…。初めまして、シム チャンミンです」
「チェ シウォンです。…キュヒョンとシムさんと言い…総務課が似合わない…。営業に欲しいぐらいだ」
「…どうも」
「コイツ、ゲイだから相談してみ?」
「え?!ゲイ?!勿体無い…あ、すいません」
顔は濃いけど綺麗に整っていて背も高い。
女の子達が黙ってないだろうにゲイなんて勿体無い過ぎる。
「大丈夫ですよ。良く言われますし別に恥ずかしく思ってませんから」
箸を持ち綺麗に半分に割ると人当たりの良さそうな笑顔で見つめられ少しだけ照れてしまった。
「悩みきいてあげて、チャンミンの」
「悩み?」
ラーメンを啜りながらキュヒョンの話に首をかしげチラリと俺を見る。
初めての人にそんなSEXで満足出来ないなんて、プライベート過ぎる話を簡単に出来る訳…
「コイツ、SEXで満足したいんだって」
「おい!!」
あー!もー!
キュヒョンとこのシウォンとか言う彼の関係性は分からないけど何で、そう人の事をペラペラ話すかなー。
仕方ないので、女の子とのSEXでは昇天出来ない事を話して女の子は居るのに欲求不満だと伝えた。
「…なるほど…。っでキュヒョンは男とさせたい訳だ」
「そう。俺も女よりいい思い出来たし」
「え?えぇー!!!」
「俺もシウォンに相手紹介して貰って只今ラブラブな恋人が居ます」
にこにこしながらピースサインをしてくるキュヒョン。
初耳が多過ぎて頭の中がパンクしそうだ。
「今夜、シムさんお時間ありますか?」
「え?…あぁ、昨日フラれたんで有りますよ?」
スマホを弄りながら話すシウォンさんはいつの間にかラーメンを綺麗に食べていた。
「では、駅前のSMEホテルの206号室に8時過ぎに来て下さい。いい子、紹介しますから」
スマホをポケットにしまうとニカッと笑い立ち上がるシウォンさん。
「絶対に来て下さいね。…キュヒョン、じゃあな。トゥギヒョンに宜しく」
「ありがとう、シウォン。勿論伝えておくよ」
トレイを持ち颯爽と立ち去るシウォンさん。
なんか全てが初めてだらけで疲れてしまった。
「夜、ちゃんと行けよ?」
「…気分じゃねーよ。男なんて」
「試すだけ試してみな?新しい扉開けるかもよ?」
「開きたくねーよ、そんな扉」
トレイを持ち返却口に返すと食堂を後にする。
…新しい扉か…。
行くだけ行ってみようかな…。