(前略)平和という文言を叫ぶだけで平和が実現できるのならば、これほど楽なこともない。人間一人一人が地球市民とやらになり、互いに争いを起こさず、豊かに暮らすことができるのであれば、この世に政治家という職は不要となるだろう。しかし、そのような夢物語が実現することはあり得ない。何故なら人間には、欲があるからだ。そもそも、平和に暮らしたいという感情も、人間の欲の一つだ。が、人間による豊かな生活への欲望が無限であるのに対し、世界の資源は有限である。加えて、世界の生産力も有限なのだ。
全世界の人々の欲望を満たすに足るほどの十分な資源や生産力が存在しない以上、奪い合いが発生するのは必至である。ルールなき奪い合いは、強者にこそ勝利をもたらす。彼らの主張通り、真にこの世から国境がなくなり、全人類が地球市民として個々の欲望を満たすために動き出したなら、強者が全てを奪う、という陰惨な世界が誕生してしまうことだろう。
あらゆる人間にとって、完全なる個人主義の下で生きていくことなど不可能。人は共同体に属さなければ、その生を全うすることができないのだ。そして、我々の属しうる最大の共同体とは国家である。残念ながら現在、これより先のものは考えられない。国こそが人間一人一人の個々の権利を擁護してくれる最大の存在なのだ。


続きは後日(^^ゞ