束縛したい。
あのボクちゃんは魂が抜けたようにチャンミンを見つめる。
あの日給湯室で何があったというのだ。
チャンミンが誘惑しただとか、そんな風には思えない。
チャンミンはそんな器用に恋愛ができるやつじゃない。
盲目的な、妄信的な恋愛をするから。
俺に。
してるから。
俺に。
でも多分、もし、万が一、俺以外と恋愛をしたとしても、
そんなふうに入れ込んだり、思考のすべてを恋愛に向けるようなことはしないんじゃないだろうか。
チャンミンは俺に対しては本能で生きる。
けれど、俺という存在を別にして見たときのチャンミンは、とても理性的で現実的だ。
俺よりも物事を現実的に見て、自分にとってどうあって、どう分別すべきかをよく考える性質じゃないだろうか。
きちんと、いい意味で損得でも判断するんじゃないかな。
これは大人になってから感じることだけど。
俺に関してもものすごく鋭く見たり、感じてきたりする。
俺のこと鈍いって時々言う。
そんな俺が心配だと言う。
だがしかし、俺も言いたい。
お前も鈍い。
俺のことに夢中になりすぎて、疑う部分を勘違いしている。
わからせないととんでもないことになりそうだ。
ボクちゃんの顔の緩みは、チャンミンのどんな顔がそうさせたんだか、考えるだけで恐ろしい。
燃える。
チャンミンを俺で縛って間違っても他人に色目を使うなよって、言い聞かせてやりたい。
チャンミンに、はい、って言わせたい。
言わせないと、不安で仕方がない。
ある意味、世の中の女の子全員と握手させるより、
一部の男と握手させるほうが恐ろしい。
そういう部分も含めて、チャンミンに理解させないといけない、
不安で不安で仕方がない。
めちゃくちゃ束縛したい。
【今誰といる?】
【昼はこっちに来い。】
【帰りはすぐ帰って、部屋で待ってろ。】
【電話するから。】
【電話して、】
ここ数日、かつてないくらい俺から連絡しているんじゃないだろうか。
だからね、まあ、あれだよ。
ボクちゃんの魂が抜かれた日から、俺は毎晩、求めちゃっていたりする。
それなら、言ってしまえと、思うんだけど。
あの言葉。
その言葉で縛り付けてしまえばいいと思うんだけど。
言えないんだ。
矛盾してる?
シチュエーションを選り好んでいるのかな、俺は。
そのたった一言で、俺たちの世界がすべて変わる気がするんだ。
変わってしまうんだ。
姿形は、なにも変わらないし、俺たちの毎日が変わるわけでもない。
けれど、変わるんだ。
他人からみたら違いなんかわからないと思う。
それでも、変わるんだ。
もっともっと、遠い明日が変わるから。
どうなんだろう。
シチュエーションを選り好んでいるのかもしれない。
チャンミンに確実にフラれなくて、
俺の気持ちも、
チャンミンの気持ちも高まっていて、
周りに敵はいなくて、
そんな瞬間を俺は待っているんだろうか。
そんなことのために、俺は一番大切な言葉をくれてやれないんだろうか。
俺って、そんなにみてくれ重視な男だった?
どうなんだろう。
チャンミンを信じてないわけじゃない、
チャンミンは信じてくれている。
体ばっかり求めちゃってるあたりって、どうなんだろう。
信じてるし、信じてもらえてるって、わかってるけど、
求めちゃってるのってどういうことなんだろう。
でも、束縛したい。
『ユノ、こんなのはどう?』
最近できたマンションの物件情報だった。
『分譲?』
『ううん、賃貸。』
もう、具体的に進めようとしていた。
気持ちは揺るがないし、言ってやれない分、部屋ぐらいは共有して落ち着かせたかった。
落ち着かせてやりたかった。
『いいんじゃない?あ、ベッド付いてんじゃん!』
『大きいね、二人で寝られるかな、』
ベッド別とか同棲の意味がない。
『今の小さいのでも無理やり寝てるし。』
『ふふ、そうでした、』
小さくて狭いなりに、それはそれで美味しい部分もあるけれど。
『ねえ、年内にできるかな、したいな、』
『引っ越し?』
しましょうとも。
『うん、そう、ほんとにほんとの、同棲。』
言いながら、ベッドの上で寝転がって、俺を見上げてくる。
上目使いで、誘ってくる。
甘えてくる。
『週末、行こうか。』
チャンミンの顎を取る。
『どこに?』
俺の指に、甘えてくれる。
俺の目を覗いて、ねだってくれる。
『ここのマンション。』
今夜もって、思ってるだろ?
『行く。』
短く答えて、それから、肘をベッドについて顔を突き出してくる。
俺の唇と重なって、ねだってくる。
まだ狭いベッドだけど、許して。
もう少し、狭いベッドでセックスさせて。
今夜も求めちゃう。
離せない。
これも、束縛のひとつかな。
『ウザくない?』
安すぎないけど、やっぱり軋むんだよね、このベッド。
『んん、なにが、…?』
毎晩し過ぎて、すぐにとろけた。
少し触っただけでトロトロになった。
『俺、ウザくない?』
入れてみると俺までトロトロになった。
『どうしたの、』
トロトロしてるくせに、硬くしてる。
俺も、お前も。
『チャンミン危なっかしくて、』
奥を少し抉ってやると、とっても喜んだ。
けど、顔はすぐに怒った。
『ユノに言われたくないよ、ぁあ、あ、あっ』
怒った顔したから、とろけさせてやった。
『チャンミン、俺に夢中でしょ?』
気持ちいい。
お前のこと敷いてると、すごく気持ちいい。
『は、ぁ、も、なにが、言いたい、のっ、』
突いてやる度に声が途切れる。
『俺と一緒、夢中だから、…ん、』
気持ちいい。
『他に対してどんな顔見せてるか、自分ではわかんないん、だっ、』
マジ、気持ちいい。
『ユノっ、あ、んんんっ、』
そろそろか、ナ?
『ゆのっ、ゆのっ、』
トロトロが、びちゃびちゃしてきた。
『束縛したい、』
『え?』
気持ちよくて、泣いちゃった目で、なんて言ったの?って、顔で見上げてくる。
だからもう一回、言ってやったんだ。
『お前のこと、束縛したい、』
そしたら、
笑ってた。
ドロドロになった後に、呟いた。
『束縛されて、』
『うん、』
『満たされてる僕、』
『うん?』
『ウザくない?』
『なんで、』
『僕の執着心は、こんなものじゃないもの、』
『じゃあ、どんな?』
『ふふ、』
『おい、』
『周りから、』
『うん、』
『もっともっと、離されたい。』
『ああ、』
『ユノが、』
『うん、』
『僕だけを見てることが、』
『うん、』
『とても気持ちいい、』
『うん、』
『そうじゃない?ユノも、』
『同じ、同じ、』
『ふふ、』
ウザくない、気持ちいいだけ。
俺たちの間でしか、成り立たない快感度数。
だから明日も、束縛したい。
…
もう、なにも言うまい(*´-`)楽しんで頂けましたら押してやってくださいませ♪にほんブログ村