市街地に怪人出現―
彩音と桐谷は市民を避難させている。早速、出来たばかりのシェルターが使われる事態に。
鼎は市街地の様子を見た。
戦闘員クラスが6体に強化態のネオメギドが1体か…。
「鼎はここから出ない方がいいよ!私達で戦うから!」
彩音の声をよそに、鼎は辺りを見渡した。
よく見ると恐怖で腰を抜かして動けない市民がいる!
鼎は周りなんて気にせずに、恭平の元へ。
「鼎、そっち行ったらやられちゃうよ!」
彩音は怪人に銃撃しながら制止してる。
「取り残されてる市民がいる、助けなければ。救わなければならないんだよ!」
鼎は怪人うごめく中へと足を踏み入れる。既に隊員達は現場に到着していた。
御堂は鼎に声を掛ける。
「お前何やってんだよ!戦えない身体で無茶すんな!死にてーのかっ!!」
「戦う手段は1つとは限らないだろう、和希。市民を助けるのも戦いだ」
お前…何、室長みたいなことを言ってるんだ!?
なんであんなにも冷静なんだよ!?
鼎はゆっくりと恭平の元へとたどり着く。恭平は怪人に対する恐怖でガタガタと震えてた。
怖い…!
恭平は怪人により友人を亡くしている。それがフラッシュバックしていた。
そんな恐怖に怯える恭平の元にあの、仮面の司令補佐が…来た。
彼女はそっと手を差しのべる。声が優しい。
「大丈夫か?怖いのは皆同じだ。…立てそうか?」
恭平は鼎の手を見た。黒い薄手の手袋。彼女は公表した中に「全身火傷」がどうとか言ってたな…。
手袋は火傷の跡を隠すためにしてるのだろうか…。
恭平は鼎の顔を間近に見ることに。白いベネチアンマスクだが…市販のものじゃない。
黒い目の保護用レンズのせいで何を考えてるか、わからないが…。この人は仮面生活が長いのか…表情があるように見えてしまう。
「…どうした?」
鼎が続ける。
恭平は恐る恐る手を伸ばす。その時、爆発音が。
恭平は身を屈めた。鼎は爆風から恭平を守るように立っている。
「あんた、なんでそんなことするんだよ…!俺なんてどうでもいいだろ!?怪我してるじゃないか」
確かに鼎は爆風の瓦礫か何かで右腕を切ったのか、出血していた。血で白い制服が赤く染まる。
「これくらい、どうってことはない。致命傷じゃないよ」
「血、だらだらしてるじゃんか!」
「ここは危ない。逃げるぞ!」
鼎は自然と恭平の手を引いてシェルターへと向かっていた。
「逃げるって、あんた…戦えないんだっけ…」
「身体はぼろぼろ、満身創痍だ。激しい運動をしようもんならドクターストップがかけられている。それに…」
「それに…?」
恭平は鼎を見た。何か鼎の様子がおかしい。急に立ち止まった。シェルターまであと少しなのに。
「どうしたんだよ?」
思わず恭平は声を掛けた。鼎は苦しそうにしている。動悸か?…いや、違う。これは…発作か!?
鼎は胸元を手で押さえながらなんとか言う。
「…気に…するな。軽い…発作が出ただけだから…」
「気にするなって、気にするだろ!どう見ても大丈夫じゃない!
満身創痍って、本当なのか…?」
恭平は鼎を気遣いながらシェルターへ。
シェルター内。
恭平は成り行きで鼎を介抱していた。外では激しい戦闘が繰り広げられている。
「少しは楽になったか…司令補佐」
「あぁ…だいぶ楽になったよ」
鼎の発作は治まっていた。
「自己犠牲はやめてくれよな…。見てられないんだよ…!俺の友人もそんな自己犠牲で怪人の手にかけられた。
あんた…常にハイリスクでやっているんだな…。仮面を人前で外せないあたり」
「素顔を見たら引くだろうよ。ひどいからな」
なんでこの人、ペラペラ喋っているんだろう。俺相手は話しやすいのか?
話してみると、話し方は冷淡だが冷たい人ではないことを感じた。市民を守るために必死なのがひしひしと感じる。
それと「司令補佐」のプレッシャーと戦っているのも感じた。彼女はまだ日が浅い。
俺は…一体何をやっているんだろう。
実際に彼女を前にしたら、何者かなんて聞けるわけがない。なんだろう。圧があるというか、彼女独特のオーラなんだろうか…。
「助ける立場なのに、助けられたな。ありがとう、青年」
鼎の声が少しだけ明るくなった。不思議なことに顔が明るくなったように見える。仮面ゆえに表情なんてないのに。
少しして。
御堂から通信が。
「怪人は殲滅した!シェルターは無事か!?」
「無事だよ。あと…市民に助けられたよ」
「…発作が出たのか!?」
御堂の声が動揺している。
「軽い発作だから大丈夫。発作は命に別状ないと何度も言ってるだろうが」
「重いのはマズイだろうが!鼎は身体をもう少し労れ!お前の大丈夫は大丈夫じゃねぇ!!」
「…わかったよ」
通信が切れた。恭平はゼルフェノアの現実を垣間見ることに。
「…今の…誰ですか…。すごい口悪かったけど」
「御堂隊長だ」
み、御堂隊長!?あの噂のアウトローな人じゃんか!
世間では御堂は「アウトローな隊長」認識されている。
戦闘が終わったことで、シェルターから市民が次々と出ていた。
恭平はまさか直に司令補佐とは話せるとは思ってなかったせいか、変な感じに。
恭平はますます「紀柳院鼎」について興味を示すようになる。
不思議な人だった。顔は仮面で隠れて見えないが、素顔が気になる…。
恭平は帰宅後、12年前の怪人による連続放火事件の詳細と、ここ数年のゼルフェノアの任務について調べていた。
すると気になる任務が。
「都筑家事件の犯人である怪人を暁晴斗と紀柳院鼎が倒した…?なんで都筑家の事件に紀柳院が絡んでるんだ?」
恭平は推理し始める。
都筑家には両親と高校生の娘がいた。全員犠牲になったというが…もし、その娘が生きていたら20代後半になっているはず。
紀柳院鼎の年齢も20代後半。顔は大火傷。全身火傷の跡もある。…まさかな。
まさか…その娘の「都筑悠真」が生存してたなんてあり得るのか?
あんな忌々しい放火事件で…。謎の爆発もあったらしいが定かじゃない。怪人由来の火はかなり厄介だ。それは一般市民でも知っている。
紀柳院は火が苦手だと聞いたような気がする。関係してるのか?
火傷が怪人由来なら…跡はなかなか消えない。
恭平は孤高の仮面の司令補佐が気になりつつも、密かに応援することにした。
しばらくは彼女のことを調べないほうがいいかもしれない。
なんだか触れてはいけない気がしたんだ。