いちかがレオナと対峙していた頃、ゼノク本館ではゼノク隊員&応援の本部隊員vs武装集団の戦いが続いている。
上総(かずさ)はイライラしていた。
「桐谷、おかしくないか?」
上総は忍者刀型の対怪人ブレードで戦ってる。
「何がですか」
「ハヤウエとレオナ以外の連中、使い捨ての駒みたいだなって…」
「上総さん後ろ!!」
桐谷が叫んだ。上総はとっさの判断で背後からの攻撃をかわす。襲撃したのはマカベ。マカベはつまらなそうに呟く。
「忍者みたいなやつと、弱そうなやつか…つまんないな」
このマカベの言葉にイラッとしたのは桐谷だった。どこからか、マシンガンとロケット砲を用意していた彼は、マカベと対峙する流れに。
「その言葉、聞き捨てなりませんねぇ」
顔はニコニコしていたが怒りを露にする桐谷。上総はぞわっとした。
この人を怒らせてはいけない!!
「上総さんは他の方と合流して下さい。私は彼と対峙します」
「へぇ〜、あんた怒るんだ」
普段は仏のような微笑みがトレードマークな桐谷だが、怒るとかなり危ない隊員。それは鼎が本気でキレた時の倍は怖いらしい。
桐谷はマシンガンを構えた。よく見ると桐谷の周りには多数の銃火器がある。いつの間に!?
「あなた達の目的はなんですか?言いなさい」
桐谷は静かにぶちキレた。
同時間帯、病院。いちかはレオナを必死に説得を続けてる。
「レオナさん…看護師だったんでしょ?
それであの時…きりゅさん、いや…紀柳院司令補佐を助けたんだよね。
あれ以降、きりゅさんはレオナさんに感謝してた、『誰かはわからんが助けてくれてありがとう』って。あの時きりゅさんかなりヤバかったの後から知った…。
加賀屋敷さんはきりゅさんの命の恩人なんだよ!加賀屋敷さんを始末してしまったら…きりゅさん…いや、司令補佐は悲しむと思う…」
レオナは元々加賀屋敷が闇医者時代にいた専属の看護師。加賀屋敷は元は武装集団の闇医者だった。
だが彼は10数年前に蔦沼長官を治療したことを契機に武装集団を離脱→ゼルフェノアに拾われる。
蔦沼は手術前に加賀屋敷から提示された額3億とは別に、ゼルフェノアへ来ないかと100億を出し→加賀屋敷は条件付きで快諾。
その条件が警察に言わないことだった。ゼルフェノアは警察と連携することが多いため、闇医者は捜査対象になりやすい。長官はゼノクを隠れ蓑に、わけありの凄腕の医者や看護師を拾っては独自の医療チームを形成した。
それが現在のゼノク医療チーム。
加賀屋敷は組織を裏切ったわけではない。100億と引き換えだったせいで、かなりややこしくなっているが。
「…私、何バカなこと…してんだろ。加賀屋敷はそんなことするわけないのに…あの人はただただ多くの命を助けたくて組織を離脱したんだ……」
レオナはようやく理解した。加賀屋敷はそんな人だから。
そこに突如やってきたのは加賀屋敷。
「玲央名、久しぶり」
「何涼しい顔して出てきてるのよ!殺されたいの!?」
「…相変わらず強がりだな。戦意喪失してるのに。元々君は戦闘に不向きでしょうが。本当は心配なんだろ、紀柳院のこと」
加賀屋敷は見抜いていた。いちかの説得が功を奏した形だと。
彼はレオナに続ける。
「玲央名、組織を離脱しないのか?ハヤウエは『怪人』なんだぞ?」
レオナはハヤウエが怪人であることをずっと「知らなかった」。加賀屋敷はそれを見抜いて組織から離脱したんだ。
「リーダーが怪人…?」
「気づかなかったのか」
レオナ、無言。さらに戦意喪失する。今まで慕っていた人が怪人という事実はショックだったらしい。
「私…騙されてたの?」
「他のメンバーも騙されているかと」
加賀屋敷はただの医者じゃない。怪人を見抜く洞察力が鋭かったんだ。
レオナはショックを隠しきれない様子。いちかはワイヤーを解いた。
御堂はなんとか病院を守れたことに安堵する。しかし…メンバーを騙してまで手に入れたいものってなんなんだ!?ハヤウエは?
本館3階では桐谷vsマカベの戦いが続く。ハッキングをなんとかしなければならないですが…。
「なかなかやるじゃん、お兄さん」
「うるさいですね…」
キレた桐谷は恐ろしい。マシンガンで的確に攻撃しているが、マカベもマシンガンを装備。銃撃戦となる。
一方、ハッキング解除のため、司令室に向かう三ノ宮。
館内は防弾シャッターに道を閉ざされたように見えるが、ある裏ルートを使うと司令室に行けるようになっている。これは武装集団も知らないようだった。
裏ルートは誰もいない。三ノ宮は万が一のためにゼノクの裏ルートを把握していた。
誰もいない…。
三ノ宮ははしごを使い、司令室へ。裏ルートにははしごが設置されているが、表からは見えない構造。
ゼノクは迷宮のごとく複雑になっている。それは本部や支部以上に複雑だ。
本館ですらそんな感じなので、研究施設はさらに複雑化している。
三ノ宮は息を切らしながらなんとか司令室に到着。
「長官、室長…ハッキングどうなってますか!?」
いきなり現れた三ノ宮に驚く西澤。蔦沼は想定内だったらしく、動じない。
「小細工入れてはみたけど、司令室からはほとんど無理だよ」
長官が言う「小細工」って何!?
「じゃあハッキングした輩を倒すか何かしないとダメ!?」
三ノ宮は必死。
「そいつ、タブレットか何か持っているはずだ。そいつからタブレットを奪えば…ハッキングは解除されるだろうね」
「長官、このハッキング変じゃないですか?なんで映像はそのままなんだろう」
西澤、呟く。
「彼らからしたら、本館はどうでもいいんじゃないかな」
「じゃあ目的は…」
「映像を見る限り、病院や東館、居住区はスルーしてるね。
病院では何者かが襲撃しかけたが、時任のおかげで未遂に終わったよ」
「…まさか、研究施設か?奴らの目的は…」
西澤は何かに気づいたようだ。
駐車場ではハヤセが予想外の人と対峙。それは支部から来た囃(はやし)だった。
実は支部からも数人来ている。
「ようやく俺の出番か。なんで支部まで応援来なきゃならんわけ?」
「つべこべ言わんで、そいつからタブレットを奪いなさい」
小田原司令からの通信。囃は体格のいい隊員なせいか、威圧感がある。しかも野太刀型ブレードを持っているため、怖い感じ。
「そこのお兄ちゃん、タブレットよこしてくれるかな〜?」
「拒否」
「あー、めんどくさっ」
囃はブレードを抜刀。ハヤセと戦闘に。小田原は慌てて伝えた。
「タブレットは絶対に破壊するなよ、怪力バカ!」
「わかってんよ、司令」
支部からは強力な助っ人もいた。月島だ。
「音撃で防弾シャッター破りましょうか?」
「全部壊したらダメーっ!!」
思わず西澤のツッコミが入る。武装集団は戦闘員クラスの怪人も複数出現させている。ハヤウエが隊員を一掃したいからか?
桐谷vsマカベはさらに激化。
「なかなかしぶといですね」
「お前もな」
ハヤウエは静かに進んでいく。戦闘員クラスの怪人を従えて。
「ここが研究施設に繋がる通路か…面白い…」
ゼノク・地下本拠地。憐鶴(れんかく)は様子見していた。
「まだ出ないの〜?」
苗代は暇そうだ。
「私達は地下から直接、研究施設へ行けます。まだタイミングが早い。
もう少し、隊員達に粘って貰わなくては…」
「九十九(つくも)を使う気か?」…と赤羽。
「九十九がないと難しいですよ」
病院では御堂が鼎のことを案じながらも、彼は本館に合流。いきなりマカベとの戦いに巻き込まれる。
「うおっ!?」
「あれ〜?御堂サンじゃないですか〜。やっと面白くなってきた」
「桐谷は無事か?」
「私はなんとか…」
「桐谷、俺に代われ。銃撃戦十八番だからな」
御堂は銃を構えた。2丁拳銃スタイルで。マカベは楽しそう。
「ハヤウエ様の進行は止まらないよ〜。止められるかな?御堂隊長」
「ごちゃごちゃうるせー」
御堂はマカベにジリジリ迫っていた。銃撃戦がいつの間にか近接戦へと変わる。
「十八番なのは銃撃戦だけじゃねぇんだよ」
「んな!?」
いつの間にか形勢逆転。御堂の有利に。
「ごちゃごちゃ言ってねーで、ハヤウエの居場所を教えろ」
「嫌だね〜。ハヤウエ様の悲願の達成なら、俺達はついていくから」
しっかし、めんどくせー敵だな…。
特別編(6)へ。