研究施設・地下1階では混乱が起きていた。
地上では研究員らが武装集団に拘束されていたが、地下にいた研究員と室長は強固なセキュリティのおかげで無事。


「今の音何ですか!?すごい音しましたけど」
研究員の1人は慌てふためく。XYZエリア担当の研究室長・冬木は冷静。


「Zエリアに異変が起きてるな…。地上の研究員と夏井室長と秋月室長・春山室長は武装集団に拘束されてるとの情報だ。研究員も恐らく」
「地上の室長全員拘束!?なんで地下は無事なんだ?」


「皆川〜、地下のセキュリティは簡単に破られないようになってんの。怪人が来ることを想定してね。
特にゼノク最高機密のあるZエリアのセキュリティは地上やメイン施設の比じゃないぞ。それこそ要塞だ」

「…要塞……?最高機密ってなんですか」
「それは私も知らないな。蔦沼長官とゼノク医療チームチーフの加賀屋敷しか知らないんだから」


2人しか知らないって、一体なんなんだ?
地下5階も初めて聞いた。

この研究施設の研究員の大半は、研究施設に地下5階があることを知らない。地下5階の存在を知ってるのは4人の研究室長とその部下の一部のみ。
それ以外だと蔦沼と加賀屋敷だけ。


「地下5階でドンパチしてるかもな」

「冬木室長、逃げなくていいんですか!?」
「上には武装集団がいる。出たら拘束されるぞ」

地下1階にいる冬木室長と研究員達は留まることを選択。地下5階には研究員はいない。滅多に行かないからだ。



その地下5階では。


さっきからやたらとバキバキ音してる…。気味悪い。この感じ、人間じゃない。怪人だ!!

御堂達はそれぞれ武器を構えた。憐鶴(れんかく)は対怪人用鉈・九十九(つくも)の布を解く。九十九は既に帯電している。
粂(くめ)は弓に矢を一気に3本つがえた。


御堂は装備を少し、変えていた。これは桐谷が用意していたものだ。
愛用のカスタム銃と対怪人用銃・マグナムブラストがあれば行けるか?近接用は使い慣れたサバイバルナイフにしている。


やがて音は大きくなり、怪人態のハヤウエが着地。怪人態のハヤウエは不気味だった。威圧感がある…。

ハヤウエは例の部屋を探している。御堂達は攻撃開始。
加賀屋敷達医療チームのうち、3人は臨戦態勢に入っていた。


「姫島・志摩・嵯峨野は御堂達に加われ!ここは俺がやる!!」
「加賀屋敷!どういう意味なの!?」

姫島達3人はまだよくわかってない。


「最高機密を渡すわけにはいかないからね。君たち戦えるんだろ?」
「当たり前でしょ!!ただのオペナースじゃないわよ!!」

姫島は少し怒る。姫島は凄腕のオペナースだが、実は戦闘慣れしてるリアル戦うナース。


志摩と嵯峨野もいつの間にか武器を装備していた。
「地下に行く時点で気づいてたからね〜。ここは任せといてよ」
「加賀屋敷は任務に専念しな」

3人は御堂達と合流。



ハヤウエ怪人態は獣のような姿に変貌&巨大化。これが本来の姿らしい。地下5階は天井が異様に高いせいか、地下1階には影響なさそうだが…。


「例のものをよこせ…」


例のもの?何のこと?
姫島達医療チームは先制攻撃。御堂達は気づいた。

こいつらただの医者と看護師じゃねぇー!!銃の腕は確かだわ。
…ゼノク医療チーム…何者?リアル戦うドクターとナースだ…。しかも強い。


粂は冷静に矢を一気に3本射つ。矢はそれぞれ軌道を描き、ハヤウエに命中するもダメージにはなってない。
獣態のハヤウエは明らかに「Z-b2」を探していた。


ハヤウエが部屋に着く前に足止めさせないと…。
御堂も銃撃。相手は獣のような姿をした巨大化した怪人。これには苦戦を強いられる。

もはや怪人ではない。異形を相手にしている。


志摩はメスを数本指の間に挟み、助走をつけて高くジャンプ。ジャンプしたついでにメスをクナイのごとく勢いよく投げる。
志摩は医療器具を武器とする、変わった医者。メスは飛び道具。

メスじゃ効かないか…。ならば!


志摩はどこからか、大きめの注射器を出した。注射器の中には赤い液体。薬品なのか、なんなのか。

これは対怪人用の液体。志摩はこの注射器をいくつか装備している。
注射器以外にも瓶に入ったタイプもある。これは投げるものだ。


嵯峨野はマシンガンを次々と撃ち込む。

「どおりゃあああ!!」

嵯峨野は銃火器を主に使う。医者に見えないが、これでも医者。


憐鶴は九十九の帯電から雷を発動させる。
「私が打撃を与えます!」

憐鶴の顔は黒いベネチアンとフードで見えないが、かなり本気だとわかる。
彼女は九十九から雷撃を発動→辺りを雷で攻撃。


憐鶴すげー…。


憐鶴の雷撃が効いたのか、ハヤウエは怯んだ。そこに二階堂が右腕の義手を展開→刃物展開と雷撃を同時に攻撃。雷撃の威力は高い。

「私も行きますよー!」
憐鶴と二階堂は初めての連携の割にはかなり息が合っている。2人の雷撃でハヤウエはダメージを受けていた。

苗代と赤羽も攻撃を仕掛ける。憐鶴さんのためなら!!


医療チームの3人も巨大化したハヤウエ獣態に攻撃。


志摩は再び高くジャンプすると注射器を構えた。「あれ」を刺す気だ!!
姫島と嵯峨野は感じた。志摩はやる。必ずやる。

彼は絶妙なタイミングでハヤウエの首筋に注射器を刺した。いっけー!!


志摩は身軽なため、ひょいひょい動いてる。どうやら注射を打つことに成功。


御堂は志摩が何をしたのか一瞬、わからなかった。

何か刺した?てか注射器でけぇ。怪人用なのか?


粂はまとめて矢を5本つがえた。
「私だって負けてらんないわよ!!」


矢に気が込められる。矢に光を帯びた。そして放つ!!

粂の弓矢はコントロール可能。5つの矢はそれぞれ軌道に乗り、ハヤウエに命中。


憐鶴と二階堂は雷撃を繰り返した。雷撃が倍となり、かなり効果的に。

御堂は猛ダッシュすると至近距離で銃を連射。さらにサバイバルナイフで切りつける。怪人特有の黒い血が飛び散る。まるで墨汁のよう。


志摩は御堂に離れるように促した。

「御堂さん!離れて!!そろそろ薬が効いてくるから!!」
「薬!?」
「さっき打った注射だよ!!あれ怪人用なんだよ!!早くしないと巻き込まれる!!」

「わ…わかった」
御堂は嫌な予感がしたのか、すぐにハヤウエから離れた。


数秒後。ハヤウエ獣態は苦しみ出した。

「これは巨大化を無効にする薬です。安心して下さい、怪人用ですから」
「ゼノク医療チーム…オソロしや…」


姫島は加賀屋敷が気になっていた。

まだなの!?早くしないとヤバいのに…!



地下5階・Z-b2。加賀屋敷は部屋の奥でゼノク最高機密を守るため、淡々と任務中。

この部屋にはある怪人が封印されている。これがゼノクの最高機密。
蔦沼はこの怪人をゼルフェノアが最初に倒した怪人として、封印していた。蔦沼曰く、「始祖」の怪人らしい。ハジマリの怪人というわけだ。


ハヤウエはこの始祖と云われる怪人の力を欲していた。力を手にすれば、さらに強化し世界を思いのままに操れる。


ハヤウエは反撃するも、巨大化はだんだん効かなくなっている。


御堂達はさらに攻撃した。

「まだまだ撃ち込めーっ!!」
「了解!」


憐鶴は九十九をさらに雷撃を強化。九十九の刀身から雷が。バチバチ音を立てている。
憐鶴の声は低くなる。本気だ。


「そろそろ執行人の本気、見せましょうか…?特殊請負人の真の実力、見たことないですよねぇ?」


あ、ヤバい…。こいつマジだ。執行人怖っ…。

御堂は憐鶴に恐れおののいていた。


憐鶴も御堂を見て思った。

この人…めちゃくちゃだけど、仲間思いだ。それぞれの長所を活かしつつ、的確に攻撃してる。



御堂と憐鶴、2人の思惑が合致した。ハヤウエは少しずつ弱っている。
総攻撃を仕掛けるには今しかないと。三ノ宮・桐谷・上総(かずさ)も巻き込んでな。


一同ダメージを受けてはいたが、ハヤウエを倒したい気持ちはひとつになっていた。



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