最終・第3ウェーブ終了まで残り時間約10分。御堂達は鼎達と合流するべくひた走る。

朝倉はスマホで鼎達の居場所を確認。
「この先に空間が歪んでる箇所がある。そこから紀柳院さん達がいる場所に行けるかも!」
「行けるかもってか行かねーと合流出来ないだろうがっ!!」

御堂はイライラしている模様。残り時間少ないってのに…!


御堂は大八車をがらがら言わせながら、桐谷と霧人は走りながら空間の歪みへ。

大八車に乗ってるいちかと朝倉は、御堂がひく大八車がガタガタ言うので振り回されてる。

「ちょ、たいちょー酔いそうっすよ…」
「時任さん、あと少しで合流出来るからっ!私に掴まって!」

5人は空間の歪みに突っ込んだ。



一方の鼎と晴斗、そして味方にした無の存在3体。無の存在Aは明らかに何かを思い出しかけている。

「晴斗、進むぞ」
「進む!?ここから先はフィールドの外になるよ!?それに無の存在さん達を放っておくの?」

「そろそろ御堂達が来る。合流したと同時にフィールドの外に出るんだよ。ゲームマスターはフィールドの外にいるからな」


そこに御堂達5人が突然現れた。

「ぎゃあああああ!!」
「うわーっ!!」


晴斗、おっかなびっくりなリアクション。
朝倉と御堂は無の存在BとCを見る。白い忍者装束風の出で立ちに白い仮面姿の彼らだが、朝倉と御堂は無の存在BとCの背格好が気になった。


朝倉は無の存在Bに話しかける。

「あんた…波路(はじ)でしょ!?解析班だった…なんでここにいるのよ!?」
無の存在Bは無反応。


鼎は行動することに。
「フィールドの外に出るぞ。残り時間が少ないからな。フィールドの外に出てしまえば制限時間なんて関係なくなる。朝倉、そいつに心当たりがあるのか?」
「…あるわ。たぶん彼は…行方不明になってる解析班のメンバーよ。この頼りない感じは波路のはず」

御堂は無の存在Cになんとなく話しかけてみた。背が高く、スタイルがいい彼には仮面で顔こそは見えないものの1人だけ心当たりがあった。

「先輩…だよな?そうなんだろ!?」
無の存在Cは無反応。


鼎はフィールドを区切る見えない壁に触れる。


「フィールドマップのこの辺、空白地帯があるんだよ。フィールドの外は他はちゃんと地図になっているのにだ。
ここだけ何もない。おかしくないか?」

「それでフィールドの外に出ようってわけか。鼎、お前怪我してんだろ。
ぶっ壊すのは得意だ。桐谷、晴斗、この見えない壁一緒に破壊しよーぜ。時間がない」


残り時間は約3分になっていた。
桐谷はロケット砲を構える。御堂は桐谷から譲り受けた手榴弾を装備。晴斗は朝倉から借りたマシンガンで見えない壁の不自然な箇所を一点攻撃。

見えない壁にだんだん亀裂が入る。
「桐谷さん、ロケット砲!」
「了解しました」


桐谷のロケット砲で見えない壁の不自然な箇所は割れた。
鼎は率先して言う。

「フィールドの外に全員出ろ!…痛い…キツい……」

鼎は痛みに耐えている。無の存在Aは鼎を気にかけるような行動を見せた。


「お前…気にかけているのか…?」
無の存在Aはうなずいた。


なんとか制限時間内にフィールドの外に出た7人+無の存在3体。
フィールド外なため、ゲームという意味を成さなくなる。

ゲームマスターのタデシナは予想外だった。
「フィールド外に出ただと?何を考えているんだ…。これでは生き残りゲームの意味がなくなってしまう」



フィールド外。第3ウェーブは終了してるため、街を囲っていた見えない壁は消えていた。

鼎達は空白地帯を進む。


「なんかだんだん気味悪くなってきてるっすね…」
いちかはびくびくしてる。

そこに突然現れたのは駅。

そういえば初めにこの異界に連れてこられた時も駅が起点だった。


「この駅、使われてねーな」
見ると駅舎はぼろぼろ、蔦に覆われている。かろうじて読めた駅名は「伍襾山(ごかやま)駅」。


この異界、駅名が数字に絡んでるな…。


「最初に俺らが連れてこられた時、駅名は数字の『三』だったよな」
「ここは『伍(五)』だ。駅名の数字が関係してるのか…この異界は」

御堂も異様な雰囲気に飲まれそう。


朝倉は無の存在Bに必死に話しかけている。
「波路だよね!?何か反応してよ!ねぇ!」

御堂は無の存在Cをチラ見した。やっぱり先輩だ…なんで辞めた先輩がここにいるんだよ?


「お前…錦裏先輩なんだろ?先輩…返事してよ…」
「和希の先輩なのか?そいつは…」


鼎も気になった様子。無の存在Cは和希の先輩らしい。無の存在Bは朝倉と関係してるらしい。


「とにかくゲームマスターの居場所を探さないと…」

晴斗は急かしている。


廃線になった伍襾山駅から進むと今度は霧に覆われた場所が出てきた。
明らかに怪しい洋館がある。

この洋館を見た瞬間、無の存在3体に異変が。僅かに言葉を発したのだ。
「元に戻して…」
「帰りたいよ…」
「もう嫌だ」


鼎は無の存在Aとさらに話すことを試みる。

「この洋館を知っているのか!?」
「…知ってる…。ここで俺達は時空を漂う存在になった」


無の存在3体はこの洋館を知っていた。
鼎は無の存在Aの声に聞き覚えがあった。彼女はそっと彼の仮面に触れる。


「この仮面…外れないのか?」
「引っ張らないで…。痛いから…」


簡単に外せなくなっている!?
無の存在Cは洋館を見るなり、さらに思い出したらしい。


「ここに記憶を弄った張本人がいる。…思い出した」
「その声、やっぱり先輩じゃねぇか!先輩、もっと思い出せる?俺だよ、御堂だよ!後輩の御堂和希だよっ!!」


無の存在Cの仮面にヒビが入り始める。
鼎と朝倉はふと思った。さらに思い出させれば…あの仮面は割れる。そうすれば3人の記憶は戻るはずだと。


「瀬戸口、もっと思い出せないか!私の素顔を見て反応したんだろう?あれは瀬戸口じゃないと出来ない反応だった…。
私のことがわかるか?『紀柳院鼎』だよ!!思い出してくれ…。陽明館に共にいただろ、あの時…思い出してくれ…」

鼎の声は悲痛になる。いつの間にか無の存在Aを必死に掴んでいた。説得させるように。


無の存在Aにも異変が。仮面にヒビが入り始めたのだ。何かを思い出したらしい。


朝倉も無の存在Bに話しかける。

「私のこと、忘れたの!?解析班にいたでしょ!?あなたは解析班の『波路』なんでしょ?
私の名前…忘れたの?朝倉よ…『朝倉凛』よ…。なんでいきなり消えちゃうのよ…ずっと探していたんだからね!!」


朝倉は涙目。どうやら波路は解析班にいた隊員らしく、行方不明になっていた。
朝倉のあの言動からするに、大切な人らしいが。

無の存在Bにも異変が。やはり仮面にヒビが入り始める。



3人の無の存在の仮面はやがて、割れた。
鼎は無我夢中で瀬戸口の側にいた。


「思い出したのか、瀬戸口…」
「紀柳院さん…。紀柳院さんの呼び掛けがなかったら俺…ずっとさ迷ってた…。思い出したんだ。ありがとう」

「おかえり」


鼎と瀬戸口はゼルフェノア直属施設にいた仲間同士。
友人に近い。

「紀柳院さん…久しぶりに会えたね。まさか司令補佐になるなんてさ」
「瀬戸口…私のことを陰ながらに応援していたのか」

「…うん。ずっと見守ってた。陽明館の人達と一緒にね」


無の存在Cは御堂を見るなりこんな感じに。


「御堂がいなかったら、俺はずっとここにいるハメになったらしいな。ありがとよ、後輩」
「錦裏先輩が行方不明になってたなんて」

「異界に飛ばされたら連絡つかねーもんな。ゲームマスター様はこの中にいるぞ。俺ら3人の記憶を弄った張本人だから許さないが」


先輩、怒ってる…。



無の存在Bも記憶を取り戻した。

「朝倉チーフ!?チーフだよね!?」
「波路!ちょっとあつかましいわ!!」


波路はかなり喜んでいる。

「すいません。急に消えたりして」
「異界で行方不明だなんて誰も予想つかないわよ。
波路、元の世界に帰って一段落したら解析班に戻ってきなよ。あんたの力は必要なんだからね」



無の存在の正体は瀬戸口・波路・錦裏だと判明。

瀬戸口は鼎がいたゼルフェノア直属施設・陽明館にいた当時の仲間。
波路は解析班メンバーの1人・錦裏は御堂の先輩だとわかった。錦裏は組織を辞めている。



洋館は不気味さを増していた。

「どっからどう見ても廃墟にしか見えないよ?」
いちかは洋館を見た。門もぼろぼろ、庭も荒れている。こんなところにゲームマスターなんているのか?


「とにかく入るぞ。なにがなんでも全員元の世界に戻ると決めたからな!」

御堂が率先して仕切る。そして10人は廃墟のような洋館の中へ。
果たして異界のゲームマスターはいるのか!?



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